6.03 『バッターの反則行為』
(a)バッターの反則行為によるアウト
 次の場合、バッターは反則行為でアウトになる。
(1)バッターが片足または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合。
「原注」本項はバッターがバッターボックスの外に出てバットにボールを当てた(フェアかファウルかを問わない)とき、アウトを宣告されることを述べている。球審は故意死球が企てられているとき、投球を打とうとするバッターの足の位置に特に注意を払わなければならない。バッターはバッターボックスから飛び出したり、踏み出して投球を打つことは許されない。
(2)ピッチャーが投球姿勢に入ったとき、バッターが一方のバッターボックスから他方のバッターボックスに移った場合、本項を適用してバッターをアウトとする。
「注」ピッチャーが投手板に触れてキャッチャーからのサインを見ているとき、バッターが一方から他方のバッターボックスに移った場合、本項を適用してバッターをアウトとする。
(3)バッターがバッターボックスの外に出るか、あるいは何らかの動作によって本塁でのキャッチャーのプレイ及びキャッチャーの守備または送球を妨害した場合。
 しかし例外として、進塁しようとしていたランナーがアウトになった場合及び得点しようとしたランナーがバッターの妨害によってアウトの宣告を受けた場合は、バッターはアウトにはならない。
「原注」バッターがキャッチャーを妨害したとき球審は妨害を宣告しなければならない。バッターはアウトになりボールデッドとなる。妨害があったときランナーは進塁できず妨害発生の瞬間に占有していたと審判員が判断した塁に帰らなければならない。しかし、妨害されながらもキャッチャーがプレイをしてアウトにしようとしたランナーがアウトになった場合には現実には妨害がなかったものと考えられるべきでそのランナーがアウトとなりバッターはアウトにはならない。その際、他のランナーはランナーがアウトにされたら妨害はなかったものとするという規則によって進塁も可能である。この様な場合、規則違反が宣告されなかったようにプレイは続けられる。
 バッターが空振り、スイングの余勢で、その所持するバットが、キャッチャーまたは投球に当たり、審判員が故意ではないと判断した場合は、バッターの妨害とはしないが、ボールデッドとしてランナーの進塁を許さない。バッターについては第一ストライク、第二ストライクに当たるときは、ただストライクを宣告し第三ストライクに当たるときはバッターをアウトにする(2ストライク後の”ファウルチップ“も含む)。
「注1」バッターが空振りしなかったとき、ピッチャーの投球をキャッチャーがそらし、そのボールがバッターボックス内にいるバッターの所持するバットに触れた際は、ボールインプレイである。
「注2」本項は、キャッチャー以外の野手の本塁でのプレイをバッターが妨害した場合も含む。バッターに妨害行為があってもランナーを現実にアウトにすることができたときにはバッターをそのままとしてそのランナーのアウトを認め妨害と関係なくプレイは続けられる。しかし、アウトの機会はあっても野手のエラーでランナーを生かした場合には現実にアウトが成立していないから本項の前段を適用してバッターをアウトにする。なお、キャッチャーからの送球によってランダウンプレイが始まろうとしたら審判員は直ちにタイムを宣告してバッターを妨害によるアウトにしランナーを元の塁に戻す。
(4)ランナーがいるとき、または送球が第三ストライクのとき、バッターがフェア地域またはファウル地域にバットを投げて、投球を受けようとしていたキャッチャー(またはミット)に当たった場合。
(5)(4)バッターが、いかなる方法であろうともボールの飛距離を伸ばしたり異常な反発力を生じさせるように改造、加工したと審判員が判断するバットを使用したり使用しようとした場合。
 このようなバットには、詰め物をしたり表面を平らにしたり釘を打ち付けたり中をうつろにしたり溝を付けたりパラフィン、ワックスなどで覆ってボールの飛距離を伸ばしたり異常な反発力を生じさせるようにしたものが含まれる。
 バッターがこのようなバットを使用したために起きた進塁は認められない(バットの使用に起因しない進塁、たとえば盗塁、ボーク、ワイルドピッチ、パスボールを除く)がアウトは認められる。
 バッターはアウトを宣告され、試合から除かれ、後日リーグ会長によってペナルティが科される。
「原注」バッターがこのようなバットを持ってバッタースボックスに入れば、バッターは規則違反のバットを使用した、あるいは使用しようとしたとみなされる。
「注」アマチュア野球では、このようなバットを使用した場合、バッターにはアウトを宣告するにとどめる。
(b)打順の誤り
(1)打順表に記載されているバッターがその番のときに打たないで番でないバッター(不正位バッター)が打撃を完了した(ランナーとなるかアウトになった)後相手方がこの誤りを発見してアピールすれば正位バッターはアウトを宣告される。
(2)不正位バッターの打撃完了前ならば、正位バッターは、不正位バッターの得たストライク及びボールのカウントを受け継いでこれに代わって打撃につくことは差し支えない。
(3)不正位バッターが打撃を完了したときに守備側チームが“ピッチャーの投球”前に球審にアピールすれば、球審は、
(A)正位バッターにアウトを宣告する。
(B)不正位バッターの打球によるものかまたは不正位バッターがヒット、エラー、デッドボール、その他で1塁に進んだことに起因した、すべての進塁及び得点を無効とする。
「注1」(3)(5)(7)項でいう、“ピッチャーの投球”とは、ピッチャーが次に面したバッター(いずれのチームのバッターかを問わない)へ1球を投じた場合はもちろん、たとえ投球しなくても、その前にプレイをしたりプレイを企てた場合も含まれる。ただし、アピールのための送球などは、ここでいう“プレイ”に含まれない。
「注2」不正位バッターの打球によるものか不正位バッターが1塁に進んだことに起因したすべての進塁及び得点を無効とするとあるが、進塁だけに限らず不正位バッターの打撃行為によるすべてのプレイを無効とする。すなわち不正位バッターの2ゴロで1塁ランナーが2塁でフォースアウトにされた後、アピールによって正位バッターがアウトの宣告を受ければ、1塁ランナーのフォースアウトは取り消される。
(4)ランナーが、不正位バッターの打撃中に盗塁、ボーク、暴投、捕逸などで進塁することは正規の進塁とみなされる。
(5)不正位バッターが打撃を完了した後、”ピッチャーの投球”前にアピールがなかった場合には、不正位バッターは正位バッターとして認められ、試合はそのまま続けられる。
(6)正位バッターが打撃順の誤りを発見されてアウトの宣告を受けた場合には、その正位バッターの次の打順のバッターが正規の次バッターとなる。
(7)不正位バッターが”ピッチャーの投球”前にアピールがなかったために正位バッターと認められた場合はこの正位化された不正位バッターの次に位置するバッターが正規の次バッターとなる。不正位バッターの打撃行為が正当化されれば直ちに打順はその正位化された不正位バッターの次のバッターに回ってくる。
「6.03b原注」審判員は、不正位バッターがバッターボックスに立っても、何人にも注意を喚起してはならない。各チームの監督、プレーヤーの不断の注意があって、初めて本項の適用が可能となる。
「規則説明」打順を次のように仮定して、打順の誤りによって生じる種々の状態を例示する。
 打  順・・・1 2 3 4 5 6 7 8 9
 バッター・・・A B C D E F G H T
「例題1」Aの打順にBがバッターボックスに入って、投球カウントが1−2となったとき、
(a)攻撃側が打順の誤りに気がついた。
(b)守備側はアピールした。
「解答」どちらの場合も、Aはカウント1−2を受け継いでBと代わる。この際アウトはない。
「例題2」Aの打順にBが打ち、2塁打を放った。この場合、
(a)守備側は直ちにアピールした。
(b)守備側はCに1球が投じられた後アピールした。
「解答」(a)正位バッターAはアウトの宣告を受け、Bが正規の次バッターとなる。
(b)Bはそのまま2塁に留まり、Cが正規の次バッターとなる。
「例題3」ABともにフォアボール、Cはゴロを放ってBをフォースアウトとしてAを3塁へ進めた後、Dの打順にEがバッターボックスに入った。その打撃中に暴投があってAは得点し、Cは2塁へ進んだ。Eがゴロを打ってアウトとなり、Cを3塁に進めた。この場合、
(a)守備側は直ちにアピールした。
(b)守備側は、次バッターボックスに入ったDへの1球が投じられた後アピールした。
「解答」(a)正位バッターDがアウトの宣告を受けEの打撃行為のために3塁に進んだCは2塁に戻されるが、暴投によるAの得点及びCの2塁への進塁は、Eの打撃行為とは関係なく行われた進塁だから有効となる。Eは次バッターとなって再び打たなければならない。
(b)Aの得点は認められCは3塁に留まる。正位化したEの次のFが正規の次バッターとなる。
「例題4」2死満塁でFの打順にHが出て3塁打し、全ランナーを得点させた。この場合、
(a)守備側は直ちにアピールした。
(b)守備側はGに1球が投じられた後、アピールした。
「解答」(a)正位のFはアウトの宣告を受け得点は全部認められない。Gが次回の第一バッターとなる。
(b)Hは3塁に留まり、3点が記録される。Tが正規の次バッターとなる。
「例題5」2死満塁でFの打順にHが出て3塁打し全ランナーを得点させ3点を記録し、続いてバッターボックスに入ったGへの1球が投じられた後、
(a)Hは3塁でピッチャーの送球によりアウトになり、攻守交代となった。
(b)Gが飛球を打ってアウトとなり攻守交代したがアピールがなく相手チームが攻撃に移った。
 この2つの場合では誰が次回の第一バッターとなるか。
「解答」(a)Tである。Gへの1球が投じられたのでHの3塁打は正当化され、Tが正規の次バッターとなる。
(b)Hである。相手チームの第一バッターへの1球が投じられるまでにアピールがなかったのでGの打撃行為は正当化されるから、Hが正規の次バッターとなる。
「例題6」Aの打順にDが出てフォアボールを得た後Aがバッターボックスについて1球が投じられた。その際、Aへの投球前にアピールがあれば正位バッターのAがアウトの宣告を受けてDのフォアボールは取り消されBが正規の次バッターとなるが、すでにAに1球が投じられたためにDのフォアボールは正当化されEが正規の次バッターとなる。ところが不正位のAはそのまま打撃を続けてフライアウトとなりBがバッターボックスについてしまった。この際もBに1球が投じられるまでにアピールがあれば正位バッターのEがアウトの宣告を受けてFが正規の次バッターとなるはずだが、またしてもアピールがなくBに1球が投じられたので、こんどはAの打撃行為が正当化されてBが正規の次バッターとなった。そのBがフォアボールを得てDを2塁へ進め次バッターのCは飛球を打ってアウトになった。Dが正規の次バッターであるはずだが2塁ランナーとなっている。この際だれが正規の次バッターとなるか。
「解答」Dは打順を誤っているがすでに正当化されしかも塁上にいるからDを抜かしてEを正規の次バッターとする。