5.07 『ピッチャー』
(a)正規の投球姿勢
 正規の投球姿勢にはワインドアップポジションとセットアップポジションとの2つの正規のものがあり、どちらでも随時用いることができる。ピッチャーは投手板に触れてキャッチャーからのサインを受けなければならない。
「原注」ピッチャーがサインを見終わってから投手板をはずすことは差し支えないが、はずした後に素早く投手板に踏み出して投球することは許されない。このような投球は審判員によってクイックピッチと判断される。ピッチャーは投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない。ピッチャーがサインを見終わるたびに投手板をはずすことは許されない。
(1)ワインドアップポジション
 ピッチャーはバッターに面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。
 この姿勢から、ピッチャーは、
 @バッターへの投球に関連する動作を起こしたならば中途で止めたり、変更したりしないでその投球を完了しなければならない。
 A実際に投球するときを除いてどちらの足も地面から上げてはならない。ただし、実際に投球するときは自由な足(軸足でない足)を一歩後方に引き、さらに一歩前方に踏み出すこともできる。
 ピッチャーが軸足を投手板に触れて置き(他の足はフリー)、ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。
「原注1」ワインドアップポジションにおいては、ピッチャーは軸足でない足(自由な足)を投手板の上か、前方か、後方かまたは側方に置くことが許される。
「原注2」(1)項の姿勢からピッチャーは、
 @バッターに投球しても良い。
 Aランナーをアウトにしようとして塁に踏み出して送球しても良い。
 B投手板をはずしても良い(ボールを両手で保持したピッチャーは、投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない)。投手板をはずすときには、最初に軸足からはずさなければならない。また、前記の姿勢から、セットポジションに移ったり、ストレッチをすることは許されない。=違反すればボークとなる。
「注1」アマチュア野球では、ピッチャーの軸足及び自由な足に関し、次のとおりとする。
 @ピッチャーはバッターに面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。ただし、他の足を投手板から離して置くときは、足全体を投手板の前縁の延長線より前に置くことができない。
 Aピッチャーが@のように足を置いてボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。
「注2」ピッチャーが投球に関連する動作をして、身体の前方で両手を合わせたら、バッターに投球すること以外は許されない。従ってランナーをアウトにしようとして塁に踏み出して送球することも、投手板をはずすこともできない。違反すればボークとなる。
(2)セットアップポジション
 ピッチャーはバッターに面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方で保持して、完全に動作を静止した時、セットポジションをとったとみなされる。
 この姿勢から、ピッチャーは、
 @バッターに投球しても、塁に送球しても、軸足を投手板の後方(後方に限る)に、はずしてもよい。
 Aバッターへの投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。
 セットポジションをとるに際して“ストレッチ”として知られている準備動作(ストレッチとは、腕を頭上または身体の前方に伸ばす行為をいう)を行うことができる。しかし、一度ストレッチを行ったならば、バッターに投球する前に必ずセットポジションをとらなければならない。
 ピッチャーは、セットポジションをとるに先立って、片方の手を下に下ろして身体の横につけていなければならない。この姿勢から、中断することなく、一連の動作でセットポジションをとらなければならない。
 ピッチャーは、ストレッチに続いて投球する前には、(a)ボールを両手で身体の前方に保持し、(b)完全に静止しなければならない。審判員は、これを厳重に監視しなければならない。ピッチャーは、しばしばランナーを塁に釘付けにしようと規則破りを企てる。ピッチャーが“完全な静止”を怠った場合には、審判員は、直ちにボークを宣告しなければならない。
「原注」ランナーが塁にいない場合、セットポジションをとったピッチャーは、必ずしも完全静止をする必要はない。しかしながら、ピッチャーがバッターのすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クイックピッチとみなされ、ボールが宣告される。6.02(a)(5)「原注」参照。
「注1」アマチュア野球では我が国では、本項「原注」の前段は適用しない。
「注2」(1)(2)項でいう“中途で止めたり、変更したり”とはワインドアップポジション及びセットアップポジションにおいてピッチャーが投球動作中に故意に一時停止したり、投球動作をスムーズに行わずに、ことさら段階をつけるモーションをしたり手足をぶらぶらさせて投球することである。
「注3」ピッチャーがセットポジションをとるに当たっては、投手板を踏んだ後投球するまでに、必ずボールを両手で保持したことを明らかにしなければならない。その保持に際しては、身体の前面ならどこで保持してもよいが、一旦両手でボールを保持して止めたならば、その保持した箇所を移動させてはならず、完全に身体の動作を停止して首以外はどこも動かしてはならない。
「注4」セットポジションンからの投球に際して自由な足は、
 @投手板の真横に踏み出さない限り、前方ならどの方向に踏み出しても自由である。
 Aワインドアップポジションの場合のように一歩後方に引き、そして更に一歩踏み出すことは許されない。
「注5」ピッチャーはランナーが塁にいるときセットポジションをとってからでもプレイの目的のためなら、自由に投手板をはずすことができる。この場合軸足は必ず投手板の後方にはずさなければならず、側方又は前方にはずすことは許されない。ピッチャーが投手板をはずせば、バッターへの投球はできないがランナーのいる塁にはステップをせずにスナップだけで送球することもまた送球のまねをすることも許される。
「注6」ワインドアップポジションとセットポジションとの区別なく、軸足を投手板に触れてボールを両手で保持したピッチャーが、投手板から軸足をはずすに当たっては必ず、ボールを両手で保持したままはずさねばならない。また軸足を投手板からはずした後に、必ず両手を離して身体の両側に下ろし、改めて軸足を投手板に触れなければならない。
「問」ピッチャーがストレッチを行ってから、セットポジションをとるまでに、両手を顔の前で接触させ、そのまま下ろし、胸の前でボールを保持した。ボークになるか。
「答」たとえ顔の前で両手を接触させてもそのままの連続したモーションで、胸の前に下ろして静止すれば、ボークにはならない。しかし、いったん顔の前で停止すれば、そこでボールを保持したことになるから、その姿勢から両手を下ろせば、ボークとなる。
(b)準備投球
 ピッチャーは、各回のはじめに登板する際、あるいは他のピッチャーを救援する際には、キャッチャーを相手に8球を超えない準備投球をすることは許される。この間プレイは停止される。
 各リーグは、その独自の判断で準備投球の数を8球以下に制限しても差し支えない。このような準備投球はいずれの場合も1分間を超えてはならない。突然の事故のためにウォームアップをする機会を得ないで登板したピッチャーには、球審は必要と思われる数の投球を許しても良い。
(c)ピッチャーの遅延行為
 塁にランナーがいないとき、ピッチャーはボールを受けた後12秒以内にバッターに投球しなければならない。ピッチャーがこの規則に違反して試合を長引かせた場合には、球審は“ボール”を宣告する。
 12秒の計測は、ピッチャーがボールを所持し、バッターがバッタースボックスに入り、ピッチャーに面したときから始まり、ボールがピッチャーの手から離れたときに終わる。
 この規則は無用な試合の引き延ばしを止めさせ、試合をスピードアップするために定められたものでる。従って審判員は次のことを強調し、それにもかかわらずピッチャーの明らかな引き延ばし行為があったときには、遅滞なく球審は“ボール”を宣告する。
(1)投球を受けたキャッチャーは、速やかにピッチャーに返球すること。
(2)また、これを受けたピッチャーは、直ちに投手板を踏んで、投球位置につくこと。
(d)塁に送球
 ピッチャーが準備動作を起こしてからでもバッターへの投球に関連する動作を起こすまでなら、いつでも塁に送球することができるが、それに先立って送球しようとする塁の方向へ直接踏み出すことが必要である。
「原注」ピッチャーは送球の前には、必ず足を踏み出さなければならない。スナップスロー(手首だけで送球すること)の後で塁に向かって踏み出すようなことをすればボークとなる。
「注」ピッチャーが投手板を外さずに1塁へ送球する場合、投手板上で軸足が踏み変わってもその動作が一挙動であれば差し支えない。しかし送球前に軸足を投手板の上で一旦踏み変えた後に送球すれば、軸足の投手板上の移行としてボークとなる。
(e)軸足を外したとき
 ピッチャーがその軸足を投手板の後方にはずしたときは、内野手とみなされる。従ってその後塁に送球したボールが悪送球となった場合には、他の内野手による悪送球と同様に取り扱われる。
「原注」ピッチャーは投手板を離れているときならば、意のままにランナーのいる塁ならどの塁に送球しても良いが、もしその送球が悪送球となればその送球は内野手の送球とみなされ、その後の処置は野手の送球に関する規則が適用される。(5.06b4G)
(f)両手投げピッチャー
 ピッチャーは、球審、バッターおよびランナーに、投手板に触れる際、どちらかの手にグラブをはめることで投球する手を明らかにしなければならない。
 ピッチャーは、バッターがアウトになるかランナーになるか、攻守交代になるか、バッターに代打者出るか、あるいはピッチャーが負傷するまでは、投球する手を変えることはできない。ピッチャーが負傷したために、同一バッターの打撃中に投球する手を変えれば、そのピッチャーは以降再び投球する手を変えることはできない。ピッチャーが投球する手を変えたときには、準備投球は認められない。
 投球する手の変更は、球審にはっきりと示さなければならない。